2016年9月7日水曜日

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 大好きなブルースはアルバートキング!其の参

 私はここで、あくまでアルバート流ブルースギターにおける技術的なこと*を書こうとしましたが、それは後ろの注釈部分で少しだけふれるとしまして、私がしびれてしまったアルバートの音楽のその”におい”を考えてみました。

 アルバートが大活躍した六十年代のアメリカ。あまりにも興味深くかつ魅力的であり、憧れみたいなものが私の中にありました。アルバートは六十年代の”病んだアメリカ”のまっただ中を生き、七十年代にかけて多く開催されたロックのイベントにも出演。そこに集まってきた白人の若者達さえをも熱狂させてしまいました。

 一方、日本ではテレビの普及により、我々庶民さえもがアメリカンエンターテイメントに近いものを目の当たりにできるようになりました。先日、多くの方に惜しまれつつ亡くなった永六輔氏による”夢であいましょう”や、ザピーナッツと谷啓氏らによる”シャボン玉ホリデー”などなどの音楽番組がお茶の間を独占し、当時小学生の私もその強烈なイメージとそのにおいをはっきりと覚えております。そこにはまさに”アメリカ”があり、煌びやかな、自分たちの世界とは明らかに違う夢の世界がありました。

 そしてテレビは少年ヨリキに大変な影響を及ぼします。”ローハイド””コンバット””スパイ大作戦””刑事コロンボ”……全て”アメリカ”のにおいがプンプンしており、そのサウンドトラックのすばらしさは奇跡的!と思っております。
ベトナムとの諍い、薬物の蔓延、フラワーと呼ばれた若者たちの行動、病んだアメリカが模索し、選んだ道はやはり、自由を主張することでした。そしていよいよ、黒人による黒人のための音楽*がコミューンを抜け出し、世界に発信し始めるのです。






 アルバート流ブルースギターにおける技術的なこと*
 最も模範とすべきTボーンウオーカーのギタースタイルと比較して決定的な違いをさがしてみました。

 Tボーンスタイルの特徴は、今やEギターにおいて常識となっている”三弦にプレーン弦”を張るという画期的な発明からスタートします。当時、三弦はワウンド弦であり、その細い芯線によりチョーキングが非常に困難でありました。(芯線が細いほど音程がかわりにくく、大きな振れ幅のチョーキングが必要になる)太いプレーン弦を張ることで一音程のチョーキングが容易になり、ポジションを変えずにより広い音程差のあるメロディーを弾く事が可能になりました。例えばキーGのブルースでは人差し指が3フレットにはりついて動かない。ひとつのホームポジションでギターを見ないブラインドタッチが可能になり、一人コールアンドレスポンスがより容易になりました。エリッククラプトンはこの奏法をそっくりそのまま踏襲し、その動きの少ないプレイスタイルから”スローハンド”と呼ばれる事になります。

 ところがアルバートはなんと!古式ゆかしい三弦ワウンドスタイルであり、三弦をチョーキングしません。しかし3オクターブにわたるフレーズを常に弾くことができるその理由は…なんとあのとんでもなくでっかい手にあり!フレット三つ離れた二つのホームポジションをポジションチェンジなしに行ったり来たりできるからです。当時私はアルバートの音をひろう度に自分の手のちいささを感じていました。

 そして決め手はチョーキングですが、アルバートはどの指(小指は一切使わないのですが)でもチョーキングができるのです。人差し指では一音、薬指で二音のチョーキングができ、特に人差し指チョーキングを多用しております。
逆張りギターならではの技でしょう。



 黒人による黒人のための音楽*
ブルースはもともとそう言うものだと思います。
ジャズの変化も大変おもしろく感じます。
キーワードは”ファンキー”なる単語かもしれません。